カラカラと音を立てるスピンドル
その音の中に包まれている少女
光とともに音まで凍結したような写真
1909年、アメリカ、ジョージア州の紡績工場で、ルイス・ハインの撮影した写真です。
100年以上前の写真ですが、切り抜かれた時間の上、静止した世界で糸が紡がれ続け、静寂の中に音は閉じ込められ、少女は少女のまま見るものに眼差しを投げかける・・・
写真というものの魅力が、ぎゅーっと詰まったような作品だな、と思います。
ロラン・バルドが、写真論を綴った『明るい部屋』で示したような、「かつてそれはあった」という写真の魔力を、苦しいほど感じてしまいます。
ルイス・ハインという写真家。とても素敵な人なんですよ。
早くに父を亡くし、苦労して色々な仕事をしながら大学で社会学を学び、教師になります。写真を始めたのは30歳を過ぎてから。仕事の資料として撮影を始めたそうなのですが、写真家としての才能があったのでしょうね。技術的なすごさは細かいことは分かりませんが、「眼差しを捉える」という上で、彼の写真は「温かな愛情」のようなものを感じます。そして、「伝えたい」という強い思いも。
社会的改革者である写真家、として有名ですね。働く子供たちの写真を撮り続け、児童労働における実情を社会に示し世論を動かしました。ジャーナリズム的、写真の暴露する力を世に示した人としても、ルイス・ハインは先駆者の一人だったのだと思います。
若い時に大変な苦労をしてきたらこそ、教師という職業を生業にしていたからこそ、そういう彼の人生の経験があったからこそ撮れる写真。被写体となる子供を包む全てを写し込むような凄い写真。長い時間を経て、色褪せないばかりか、ルイス・ハインの思いは時間と共に増幅して胸に刺さる感じがします。